MESSAGE

50年以上にわたってブラジル音楽をリードし、その魅力を世界に伝えてきたジルベルト・ジルは、80代を迎えた今も元気いっぱいだ。2021年「ブラジル文学アカデミー」の永久会員に現役の音楽家として初めて選出され、今年の4月にはブラジルの郵便局がジルの肖像を切手にして発行するなど、社会的な評価も目覚ましい。敬愛するジョアン・ジルベルトにオマージュした2014年のリーダー作『ジルベルトズ・サンバ』で、斬新なギターワークを披露した。力のこもった新曲を通じて老いと無縁の創造意欲を発揮した2018年のリーダー作『OK OK OK』は、今世紀のジルの最高傑作と大推薦したい。ジルの音楽は今も現在進行形だ。

80歳を迎えた2022年、ジルのファミリー総出演による音楽とトークのホーム・パーティー『EM CASA COM OS GIL』が配信チャンネルで放送され、同名のサントラ・アルバムもデジタル・リリースされた。2008年以来16年ぶりの来日公演のバンドも、近年のアルバムでプロデューサーをつとめている息子のベン・ジル、息子と孫が組んでいるバンド、ジルソンズのメンバー、そしてミドルティーンの孫娘からなるファミリー・バンド。ツアー・タイトルの「アケリ・アブラッソ」は “ハグを/よろしく/元気で” といった意味の、ジルの1969年のヒット曲のタイトルだ。ジルの数々の名曲を、本人と息子や孫たちが歌うアットホームな雰囲気の、そしてブラジル人の特徴である家族の絆に貫かれたコンサートを、僕たちもファミリーに混ぜてもらって楽しもう。

ー 中原 仁 ー